西山 覚
工学研究科 教授(専門分野:応用化学、触媒技術、水素製造技術開発)
現在の化学産業は化石資源由来の油相ベースで構築されているが、持続可能なバイオマス資源へ変換すると水相ベースでプロセスが構築される。化学製品の生産に広く使われている固体酸・塩基触媒は水に被毒されて失活する。
水と混和する有機化合物から水を完全に分離するには多段階の分離プロセスが必要となる。エネルギー消費量削減の観点から、水共存下での固体触媒使用を考慮し耐水性付与が望まれている。
今年度は水素移行反応によるアルデヒドからアルコール合成反応において、酸・塩基機能を効果的に示すZr種と有機配位子からなるZr系金属有機構造体(Zr-MOF)を触媒とし、有機配位子サイズや粒子径が耐水性に与える影響について検討した。
有機配位子の構造がZr-MOFの疎水性に強く影響し、結果として水素移行反応における耐水性に影響することが明らかとなった。また、同一の有機配位子を有するZr-MOFにおいて、Zr-MOFの粒子径が増加すると、疎水性反応場の空間が粒子内部まで広がり、耐水性が向上する傾向を示した。
これらの知見は、耐水性を発現する反応場の設計理論構築に寄与し、バイオマスを利用した持続可能な社会の構築に貢献すると期待できる。
現在の工業水素の製造法は天然ガスの水蒸気改質反応であり水素の生成に伴い温室効果ガスである炭酸ガスが多量に発生する。炭酸ガスの再資源化を目指して、炭酸ガスと天然ガスから合成ガスを効率的に生成する触媒プロセスシステムを検討している。本反応は、触媒成分の酸化や活性点への炭素質蓄積による性能の低下が大きな問題であり、これら副反応の制御が持続可能なプロセス稼働のキーポイントである。
